スキンスコア

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目次



序論

スキンスコア(total skin thickness score; TSS)は強皮症患者の皮膚硬化の程度を半定量的に評価する方法です。膠原病患者の診療では疾患活動性の評価が不可欠ですが、強皮症では主たる病変である皮膚硬化の重症度を評価する確立した方法がありませんでした。スキンスコアは米国のリウマチ医であるGerald Rodnan教授により1970年代にはじめて考案されました。全身26の部位の皮膚硬化の程度を5段階(0-4)にスコア化し、その合計(最大値104)をスキンスコアとしました。しかしながら、この方法は非常に煩雑であり、皮膚硬化のスコアのつけ方にも熟練が必要であったため、一部の施設を除いて普及しませんでした。その後、皮膚硬化の評価法として皮膚硬化の範囲を%体表面積で表すマネキン法、皮膚の伸縮性を調べる吸引カップ法やエラストメーター法、超音波で皮膚厚を測定する方法などが考案されましたが、煩雑であったりあるいは再現性に乏しく、スキンスコアより優れた方法はありませんでした。従来から用いられている握力、口唇間距離、指尖手掌間距離などのパラメータは、疾患の進行による悪化を反映して動くことがありますが、皮膚硬化が改善した場合でもこれらのパラメータには変化が乏しいことより、治療による効果の判定には不適切でした。1990年代に入ると、強皮症に対する新しい治療法の効果の評価法の必要性から、世界的に統一したスキンスコアを作ろうという動きが高まり、アメリカ、イギリスを中心にRodnanの原法を簡略化したスキンスコアが作られました。皮膚硬化を調べる部分を17カ所に減らし、さらに皮膚硬化のスコアも0-3と4段階(最大値51)としたもので、modified Rodnan total skin thickness score (m-Rodnan TSS)と呼ばれています。欧米の強皮症専門医が一同に集まり、m-Rodnan TSSの正確さや再現性を検討するセッションが何回も開かれ、m-Rodnan TSSは同じ検者が繰り返し行っても、異なる検者間でもスコアのばらつきは少なく、その再現性は慢性関節リウマチの関節炎の評価法として広く用いられている関節圧痛スコアと同等であることが示されました。また、皮膚硬化のスコアとpunch biopsyした皮膚の重さがよく相関することから、スコアが皮膚硬化の程度を反映していることも示されました。したがって、強皮症患者の皮膚硬化の程度を半定量的に表わすm-Rodnan TSSは特別な装置を必要としない、皮膚効果の変化に敏感な、また再現性が高い評価法として広く認められています。アメリカやヨーロッパ諸国の強皮症専門医の間ではm-Rodnan TSSはすでに標準的な皮膚硬化の評価法として普及し、強皮症に対する治療法の効果の検定する前向き試験にも用いられています。このパンフレットはm-Rodnan TSSの内容を分かりやすく解説したものです。


スキンスコアの取り方

1.皮膚硬化の程度

皮膚硬化の程度は0-3のスコアで表します。0は正常皮膚で、皮膚硬化を認める場合にはさらに軽度(1)、中等度(2)、高度(3)の3段階に分けます。検者が拇指と示指の末節指腹で大きく患者の皮膚をつまみ上げた際に感じる皮膚の厚さで判定します。基本的には検者の経験に基づいて判定されますが、欧米での専門医によるセッションでは予想に反して検者間でのスコアに大きなばらつきはありませんでした。各検者が一定の基準を持って判定すれば、患者の診療や薬効検定には大きな問題はありません。表1に従来から行われている二段階つまみ法(two-step pinching method)をもとにしたおおよその基準、図1に実際の皮膚をつまみ上げた際のスコアごとの所見を示します。

表1. 二段階つまみ法による皮膚硬化スコアの取り方

手指では近位指節間関節と中手指節間関節の間で調べます。浮腫期の患者では特に手指、手背、足背の腫脹のため皮膚をつまみづらくなり、皮膚硬化のスコアを実際より高く感じることがあるので注意が必要です。

図1.各スコアーの皮膚所見の実例

スコア1

大きくも小さくもつまみ上げられるが、大きくつまみあげた時の皮膚が厚い


スコア2

大きいつまみ上げができる      小さいつまみ上げができない

 

スコア3

大きいつまみ上げができない     小さいつまみ上げができない

 

2. 皮膚硬化の範囲

図2に示す合計17の部位で、それぞれ皮膚硬化の程度をスコア化し、その合計をスキンスコアとします。一つの部位にスコアの異なる皮膚硬化の部分がある場合は、最大のスコアをその部位の皮膚硬化のスコアとします。


図2. スキンスコアの記録のためのシートの例。

スキンスコアの評価

原則的にスキンスコアは同一の検者が一貫した基準で経時的に繰り返し調べます。一回のみのスコアは意味がなく、経時的な変化が重要です。図3に強皮症の病型ごとのスキンスコアの典型的な自然経過を示します。びまん型では発症後3-5年間はスキンスコアが増えますが、その後ゆっくりと低下します。限局型では、スキンスコアそのものが低いですが、経過を通じて大きく変化することはありません。したがって、スキンスコアを評価する際には、強皮症の病型、発症からの期間などを考慮する必要があります。びまん型でスキンスコアが増えてくる場合は今後さらに皮膚硬化や内臓病変が進行する可能性が高いことを示します。逆にスキンスコアが減少する場合は、皮膚硬化のピークを過ぎていることが予想されます。経過中のスキンスコアの最大値が高いほど生存率が低下すること、スキンスコアの上昇と強皮症腎クリーゼ、強皮症による心筋障害の発症との関連が報告されています。スキンスコアは一般的には3カ月毎に調べますが、びまん型の発症してまもない時期にはより頻回に測定します。スキンスコアは、強皮症患者における皮膚硬化や内臓病変の出現や進行の予測に有用であるだけでなく、強皮症に対する治療法の効果の判定、多施設での共同研究にも用いることができ、幅広い応用範囲があります。ただし、スキンスコアはあくまで皮膚硬化の程度をみる指標であり、これのみで強皮症の病態をすべて反映するわけではありません。実際の診療ではQuality of Life (QOL)や機能障害の程度、肺、心臓などの臓器病変などと合わせて病態を総合的に評価する必要があります。


図3. 強皮症におけるスキンスコアの自然経過

参考文献

  1. Rodnan GP, Lipinski E, Luksick J: Skin thickness and collagen content in progressive systemic sclerosis (scleroderma) and localized scleroderma. Arthritis Rheum 1979; 22: 130-40.
  2. Clements PJ, Lachenbruch PA, Seibold JR, et al: Skin thickness score in systemic sclerosis: an assessment of intraobserver variability in 3 independent studies. J Rheum 1993; 20: 1892-6.
  3. Clements PJ, Lachenbruch PA, Seibold JR, et al: Inter and intraobserver variability of total skin thickness score (modified Rodnan TSS) in systemic sclerosis. J Rheum 1995; 22: 1281-5.
  4. Black CM: Measurement of skin involvement in scleroderma. J Rheumatol 1995; 22: 1217-9.
  5. Clements PJ, Medsger TA Jr: Organ involvement: skin. In Frust DE, Clements PJ, editors. Systemic sclerosis. 1st ed. Williams & Wilkins; 1995, p389-407.
  6. Medsger TA Jr: Syetmic sclerosis (scleroderma): clinical aspects. In Koopman WJ, editor. Arthritis and Allied Conditions. 13th ed. Lea & Febiger; 1997, p1433-64.