強皮症の皮膚・結合組織病変の評価法

強皮症患者の皮膚・結合組織病変の程度を評価する指標には、これまで様々なものが提案されてきました。1990年代に入ると強皮症の多施設共同研究や治療効果の評価法の必要性から、その中から簡便で、再現性があり、疾患活動性を反映する指標が好んで用いられるようになりました。最も標準的な指標はスキンスコアですが、そのほかに広く用いられている指標として、開口(Maximal Oral Aperture)、手の伸張(Hand Extension)、手指の屈曲(Finger Flexion)の3つの指標があります。これらは簡単な身体所見であり、特別な装置は必要とせず、簡便、安価で、どこでも行えますが、スキンスコアに比べて数値の変動が少ない欠点があります。すなわち、diffuse型の強皮症患者で皮膚硬化が急速に進行する時期にはこれらの指標は短期間に変化しますが、皮膚硬化が安定し、萎縮期に入ると数値の改善はほとんどみられません。ただし、これらの指標は食事、会話や手を使う多くの日常動作における機能障害をある程度反映すると考えられています。開口、手の伸張、手指の屈曲の3つの指標はアメリカやヨーロッパ諸国の強皮症専門医の間ではスキンスコアとともに標準的な強皮症の評価法としてすでに普及し、強皮症に対する治療の効果の検定する前向き試験にも用いられています。これらの身体所見の取り方は個々の施設で多少異なりますが、ここに紹介するものは最近のアメリカでの二重盲検試験に用いられたもので、今後世界的に標準的な手法になると思われます。

開口(Maximal Oral Aperture)

写真で示すように、患者にできるだけ大きく口を開くように指示して、口の中央で上口唇の下縁と下口唇の上縁の間の距離を測定します。個人差が大きいために正常値はありませんが、通常30mm以下の場合に開口障害があるとみなします。実際には、同一の患者 で経時的な変化を調べます。Diffuse型の強皮症患者では、皮膚硬化が進行する時期に減少し、その後はほぼ一定の数値をとります。Limited型の強皮症患者でも徐々に減少する場合があります。強皮症における開口障害は頬部など口周囲の皮膚および皮下組織の硬化の程度を主に反映しますが、顎関節の機能障害、顔面筋の萎縮、口唇の後退なども関与すると考えられています。

手の伸張(Hand Extension)

強皮症患者、特にdiffuse型の患者では手指の拘縮による運動制限がみられます。これは、皮膚に加えて靱帯、関節包、腱鞘などの周囲の組織の線維化の結果と考えられています。近位指節間関節(PIP関節)の変化が高頻度で、さらに進行すると中手指節間関節(MCP関節)も障害されます。これらの関節は手掌側に曲がった状態で固定され、可動性が低下します(屈曲拘縮)。PIP関節の屈曲拘縮は高度な場合も多く、伸展障害が機能的に問題となります。一方、MCP関節の屈曲拘縮では屈曲の制限が手の機能に大きく影響します。第I指(母指)の手根中手骨(CMC関節)は伸展、外転位に拘縮し、第II指(人差し指)との距離が開くことから、物をつまむことが困難になります。これらの拘縮性の変形およ び手指の伸展、屈曲制限により、強皮症患者では手指を使う日常動作が高度に障害されます。そこで、手指の伸張障害の程度を評価するため、手をできるだけ大きく開いた時の第I指(親指)と第V指(小指)の間の距離を計測します。この指標は、Active handspreadや1st to 5th finger extensionとよばれます。写真に示すように、患者に手掌を上に向けてできるだけ大きく手を開くよう指示します。その際の第I指(親指)と第V指(小指)の外側の距離を、左右それぞれ測ります。手の大きさの個人差のため正常値はないので、同一患者での経時的な変化を調べます。Diffuse型の強皮症患者では、皮膚硬化が進行する時期に減少し、その後はほぼ一定かゆっくり改善します。

手指の屈曲(Finger Flexion)

手指の屈曲障害の程度を評価するため、手を握った時の指先と手掌の間の距離を測定します。この指標は、Active fist closureやFinger-to-palm distanceなどとよばれます。写真に示すように、患者に手掌を上に向けて手を握るよう指示します。その際の第IV指(薬指)の指尖と手掌の遠位水平シワ(いわゆる感情線)の間の最短距離を、左右それぞれ測定します。正常値は0mmで、屈曲拘縮およびMCP関節の屈曲制限が進行すると徐々に拡大します。経時的な変化を調べると、diffuse型強皮症患者では皮膚硬化が急速に進行する時期に増大し、その後はほぼ一定かゆっくり改善します。