主な研究
当教室では、全身性強皮症や皮膚筋炎などの膠原病の病態解明を目的として、B細胞機能、特に自己抗体と産生サイトカインに着目して研究を行っております。
01自己免疫機序の解明に向けて
膠原病に共通する特徴として、自己抗体の産生がほとんどの疾患や症例にみられます。その自己抗体の意義はいまだ不明ですが、自己抗体の出現は症状の出現に先行してみられること、自己抗体は臨床症状とよく相関することから、その産生機序と病態には深い関わりがあると考えられます。 自己抗体はB細胞から産生され、以前はB細胞は単に抗体を産生するだけの細胞と考えられていました。しかし、近年B細胞は抗体産生以外にも、抗原提示、T細胞の活性化や分化の制御、サイトカインの産生など多彩な機能を持つ免疫担当細胞であることがわかってきました。また、最近のトピックスとして、B細胞の中には自己免疫が炎症を抑制するサブセット“制御性B細胞”も存在することがわかってきました。
これまでに、全身性強皮症のB細胞ではCD19などのシグナル制御分子の発現が上昇していること、B細胞のホメオスターシスに異常がみられること、強皮症の動物モデルであるタイトスキンマウスではB細胞が活性化しており、B細胞を抗体治療により消去すると皮膚硬化や自己抗体産生が抑制されることなどを明らかにしてきました。さらに、制御性B細胞の存在やその作用に関して研究成果を報告しています。
02自己抗体の解析
膠原病の自己抗体の解析では、免疫沈降法による疾患特異自己抗体の検出を20年ほど前より行っており、その成果として、悪性腫瘍を合併する皮膚筋炎に検出される抗TIF1抗体を発見し、さらに抗体によるサブセット分類の実現などを介して皮膚筋炎の診断技術の向上に尽力してきました。さらに、急速進行性間質性肺炎を高率に合併する抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎において、同抗体価が病勢の指標として有用であることを明らかにしております。このように、自己抗体の解析を通して実臨床に役立つ研究を数多く行っております。